キャッシュレス決済は、現金以外での会計支払のことで、一般にはクレジットカード、電子マネー、QRコード決済(○○ペイなど)での支払のことを指します。 ※広義には、商品券やプリペイドカード・ポイント払い・仮想通貨・銀行振込なども含まれます。
キャッシュレス決済を利用するためには、サービス提供会社へ申込をして、カードやスマホを認識するための決済端末を借りる必要があります。QRコード決済の一部は端末を使わずに、QRコードのみで決済が可能です。
キャッシュレス決済では、会計ごとの金額に応じた決済手数料と、月額利用料(ない場合もあり)を支払う必要があります。また、決済から銀行入金までのサイクルも業者によって違いますので、キャッシュレス決済の導入を検討する際には各社の条件を十分に比較検討した方がよいでしょう。
20年以上前は、キャッシュレス決済といえばクレジットカードしかなく、その端末の設置には年間の利用金額など多くの条件があり、決済手数料も今と比べると割高でした。 この20年ほどで電子マネーが本格的に普及し、ここ数年はQRコード決済が登場したことで、手軽に導入できるサービスが増え、決済手数料も大きく引き下げられています。
特に2019年10月から2020年6月まで実施された『キャッシュレス・ポイント還元事業』により、導入のコストや決済手数料が一時的に削減され、消費者にも利用金額に応じたポイント還元があったため、利用の件数、金額とも大きく伸びました。筆者の携わるベーカリーカフェも同事業に参加しましたが、参加前の半年間のキャッシュレスの決済比率が2割程度だったのが、参加期間は3割以上に増えました。
現在、日本でのキャッシュレス決済の比率は2割程度と言われており、政府は2025年の大阪万博までに、キャッシュレス決済の比率を4割にしたいという目標を設定しています。
キャッシュレス決済のメリットとデメリットを、支払うお客様側と、支払いを受けるお店側で検討してみましょう。
2020年に入り、コロナウィルスの感染拡大を受け、感染症予防の観点からキャッシュレス決済が推奨されるようになってきています。現金の場合は、お札にしろ小銭にしろ、表面に雑菌が付着していますので、授受での感染の危険性がゼロではありません。キャッシュレス決済の場合は、クレジットのサインをいただくような場合をのぞき、お客様とお店側の接触がほぼありませんので、現金授受より安全ということになります。
支払う側のお客様のメリットとしては、まずは手間が減ることでしょう。 会計時に財布からお札や小銭を出す手間が省けるだけでなく、現金が減ることが少なくなるので銀行からお金を下ろす回数も減り、あまり現金を持ち歩く必要もなくなります。
また現在、多様なキャッシュレス決済のサービスがありますが、中には支払い金額に応じてポイントが貯まり、そのポイントを支払いに充てることができるサービスもありますので、それらを使えば金銭的なメリットもあります。
支払う側のデメリットとしては、キャッシュレス決済を利用する場合、カードやスマホなど支払いの情報が登録された物が必要になり、これらがないと利用することができません。また決済にインターネットや電話回線を使うため、停電時や災害時などに使えなくなるリスクがあります。
またキャッシュレス決済は使いやすく、その上どのくらい金額を使ったかが表面的にはわかりづらいため、ついついお金を使い込みがちになってしまうのも注意が必要です。
まず最大のメリットは、現金管理が楽になることです。 別項の現金管理の記事でも触れましたが、 キャッシュレス決済の導入により、現金取引の件数が減りますので、 レジ担当としてはお札や小銭を数えたり出納する手間が省けます。
電子マネー、QRコード決済は特に少額の決済でも利用が多いので、 小銭の出し入れが減れば、作業的にかなり負担が減るだけでなく、 お金のお渡し間違い等のミスも減ります。
また、釣銭の減るペースも落ちますので、 両替の頻度も下げることができ、運営面でも楽になるでしょう。
大手チェーン店のように、レジと決済端末が連動して自動処理され、かつ少額会計ならクレジットの認証も不要なシステムであれば、間違いなく時間短縮になります。このようなシステムは多くの場合、高額なシステム開発費用が必要で、かつクレジット認証を不要とするための保証金も必要ですので、個人店では導入が難しいと言わざるを得ません。
個人店でも導入が容易なレジ非連動型の端末の場合、決済端末を操作して金額を入力する時間があるため、 釣銭を数えたりお渡しする時間の短縮はできますが、 処理時間は現金支払と大きな差がないのが実情です。 特にクレジット決済は、サインや暗証番号の入力が必要となるため、現金決済より時間がかかることが多いです。時間短縮効果はあまり期待しないほうが良いでしょう。
ただし個人店で導入可能な価格帯でも、特定のPOSレジと決済サービスの組み合わせで最初から連動に対応しているものもあります。レジと端末を連動すれば金額の処理ミスもなくなるので、その観点からレジや決済サービスを探してみるのも一つの方法と思います。
もうひとつ、お店側のメリットとしては、キャッシュレス決済を導入することで、その決済手段を持つお客様の来店動機が高まり、集客増につながる点が挙げられます。ただしこれは、似たような条件でカフェを探している時に、こちらのお店のほうが決済が便利だから行こうとか、今日あまり現金は持っていないけれど、ここなら電子マネーが使えるから利用しようとか、利用したいお客様の背中を少し押す程度の効果です。
個人店のカフェで特に大事なのは、他のカフェにない商品力とサービス、雰囲気であって、便利な決済システムはちょっとした付加価値にすぎません。 それでもキャッシュレス決済が使えないお店よりは便利ですから、使えた方が良いのは事実です。
また、これだけキャッシュレス決済が普及してくると、近隣の競合店も当然のように導入しているでしょうから、競合に対してマイナスとならないように導入するという考え方もあるかと思います。
キャッシュレス決済には、導入費用と決済手数料、月額利用料がかかります。 ※サービスによっては一部なかったり、期間限定で無料にしているものもあります。
条件は決済の種類や決済会社によります。最近は導入費用ゼロや低い手数料を売りにする決済会社もありますが、それでも決済金額の3~4%の手数料はかかります。つまり定価で販売しても、キャッシュレス決済の場合、お店側は実質何%か割引をしている形になります(そしてお客様にはその割引感はありません)。 注意してほしいのが、端末やサービスの利用に月額利用料やオプション料金が付くケースで、一見したところ決済手数料が低く見えても、利用料などの固定費用も含めると割高になるサービスも少なくありません。
固定費のかかるシステムは決済件数が少なくなるほと割高になりますので、導入を検討するにあたっては、複数のサービス会社の資料を集めて、条件を比較してみてください。
また、キャッシュレス決済は、お店の会計上は売掛扱いとなり、売上金から手数料等を引いた金額が銀行に入金されるまでに少し時間がかかります。これも決済会社によりますが、15日と月末の月2回締め、あるいは月末締めなどで合計し、入金にはそこから数日~2週間程度かかります。 最近はQRコード決済などで入金の速さを売りにしているサービスもあり、翌日には入金という所もありますが、入金に手数料がかかったり、サイクルを短くするとオプション料金がかかるようなケースもあるので、入金の条件などもしっかり確認するようにしてください。
もうひとつデメリットとして挙げられる、レジと非連動型の端末の場合の金額入力を間違えるリスクについては、スタッフのトレーニングと、端末入力後の伝票金額照合を徹底していくしかありません。 正直なところ、現金支払いのお金の受け渡しミスよりは頻度が少ないように思いますので、そこまで大きく心配する必要はないでしょう。
ただしキャッシュレス決済の場合、金額を間違えたあとの対応が、現金よりもやや煩雑になります。といっても、実際の金額より少なく入力してしまった場合は、現金の受け渡しミスと同様に、お店の損失として被らざるを得ないかと思います。問題は多く入力してしまった場合の返金対応です。 クレジット決済であれば、カード会社に連絡して金額の訂正を依頼します。この場合、お客様への連絡や承認はカード会社が行いますが、場合によりカード会社からの入金が遅くなることがあります。 電子マネーはその場でないと返金ができないものが多く、間違いが判明しても多くの場合、お客様に連絡がつけられません。この場合、後日お客様からのお申し出があった場合に現金で返金という形になりますので、間違えた情報を申し送りなどで共有する必要があるでしょう。 QRコード決済は多くの場合、管理画面から返金する機能がありますので、そちらからの返金が可能です。
キャッシュレス決済についてはお店側にコストがかかりますので、そのコストに見合ったメリットがあるか、費用対効果があるかどうかで導入の是非を判断するしかありません。 ただ、昨今のコロナウィルスの感染拡大でキャッシュレス決済が重要視され、多くの店舗が導入を済ませている現状を踏まえると、ある程度のコストに関しては販促的に割り切って、前向きに導入利用を検討した方が良いかと思われます。
新たに導入する場合、決済代行会社に相談してサービスを紹介してもらう方法と、インターネット等からサービス会社に直接申し込みをする方法があります。
不慣れな場合は決済代行会社に相談した方が良いかと思います。手続等のアドバイスも受けられ、場合によっては手数料率などの条件が良いサービスの提案を受けることもできます。決済代行会社は何社もありますので、数社に相談して、条件の良い所を選んでください。
最近はクレジットや電子マネーなど複合型決済で、インターネットで手軽に申し込めるサービスも増えています。条件が折り合うなら、直接申し込んだ方が手軽で早期に導入が可能と思います。こちらも複数のサービスが提供されていますので、条件を比較して検討してください。
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